「……今なんと言った」
「ひ……ご、ごめ、ひい、ごめんなさ……っ」
「謝罪の必要はない……その口は永遠に閉ざされる。二度と同じ罪を犯すことはなくなるのだ」
「ひひいぃいーーーーーーーーーーーっ!!!」
ルリス・ミチクス、失禁。
1・
彼女はマータ・チービン事件の罰を唯一背負い、毎日の罰掃除に勤しま“されていた”。不平不満は大きい。実力で言えば一般隊員トップクラスに入るであろう自分が、通常任務はともかく戦闘任務を外されて、今も他の隊員たちが泥臭く戦っているところを想像するだけで腹が立つ。
「全部……リグライのせい」
あいつが普段から自分に言いがかりをつけているから、間抜けな秘密を知られてマータ・チービンなんかに身を堕とす結果になったんだ……彼女は、本気でそう考えている。
「あのバカチビチンポ女、廊下でウンコして自分で食って掃除すりゃいいのよ……!」
思わず最悪クラスの悪態を、唾とともに飛ばしていた。それが床や壁に当たるのと同時に、ルリスの足は床を離れていた。
「……今なんと言った」
真っ黒な鎧に、仮面――無機質な平面が二つ合わさったような――を装着し、己の身体のすべてを覆いつくした男、カゲロー・シンバ第一部隊副隊長がその首を掴み、持ち上げていたのである。
「ひ……ご、ごめ、ひい、ごめんなさ……っ」
ルリスは早くも謝罪の言葉を放つ。副隊長と一般隊員の戦闘力差や現在装備の有無もそうだが、この仮面の奥に何が潜んでいるのかわからない、そんな恐ろしさに負けて。
「謝罪の必要はない……その口は永遠に閉ざされる。二度と同じ罪を犯すことはなくなるのだ」
カゲローの鎧の手指部分から、金色の爪が飛び出す。ぎりぎりでルリスを傷つけない位置に浅く食い込む。その冷たさに、ルリスは全身縮みあがって悲鳴を上げた。
「ひひいぃいーーーーーーーーーーーっ!!!」
涙を流し、鼻水を垂らし、泡を吹いて、そして失禁して。何が潜んでいるかわからないというのは間違いだ。確かに“殺意”が籠っている。純度の高い、“殺意”が。
汚臭が、漂う。垂れ下げられた二本の脚、それを包む清掃作業服の内側が色濃く変わる。足首まで。ぽたり、ぽたり。
「カゲロー! 何をしているんだ、やめろ!」
その言葉が出た瞬間には、ルリスの身体は床に落ちていた。脚での着地ままならず、膝、尻、左半身……自らの流した汚物に塗れ、息絶え絶えに目だけをカゲローに向ける。そして、その後ろにやってきたもう一人の男……第一部隊隊長、ロクロー・シンバにも。
「もう少しで大変なことになるところだったぞ……」
「……申し訳ありません、隊長」
ロクロー・シンバ。ショートヘアーの黒髪、中肉中背に二回りほどの肉量と身長を加えた体格、静かな笑みを浮かべた好青年。戦闘力こそ(鎧装備基準で言えばだが)リグライに劣るものの、その物腰の柔らかさや作戦面での判断、会議では多くの場合議長を務めるなどして、司令官や副司令官に次ぐVESのナンバー3であるとの呼び声が高い男だ(それでも強さでカバーしたリグライこそナンバー3とする声もあるが)。遠縁にあたるカゲローを副隊長として入隊させたのも、彼である。そのため、カゲローはその言葉に応じてルリスを離したというわけだ。だが、言う。
「……余計に床を汚して、掃除係としても半端者だ。今日はそのままの姿で仕事をこなせ」
と。
ルリスはこれに反抗する気力がなかった。ひい、ひい、と恐怖の声を放った後、「わかりましたあっ!」と彼女の普段よりいくらも高い声で叫び、さっそくモップで床を拭くことしかできない。そんな彼女に、もう一人……ロクローの後ろに付いていた女性が静かにぽつり、言う。
「やりすぎと……違います?」
一般隊員、リサー・バビロフ。金髪ロングで狐のような糸目。糸目という特徴のみ被っていることと彼女の出身から、“関西版ノルヴィー・イコラ”、略して“カンノル”と呼ばれているとかいないとか。
ともあれ、この言葉にロクローがにっこり笑った。
「そうだな、カゲローやりすぎで言い過ぎだぞー。ルリス隊員、ごめん。カゲロー……リグライ隊長が好きすぎてね」と。
「隊長……」
カゲローは小さく首を動かしてロクローを見ると、これにはややいたずらめに、にっこり。だが、リサーが咳ばらいをすると、ロクローは慌てて付け加えた。
「おっと、身を清めてから再開するってことでいいからね!」
ルリスはこれに、再び脱力。やっと本当に助かった瞬間であるかもしれなかった。
「ふひゃああああ……!」
と、同時に屈辱が襲う。失禁。小便塗れ。涙に鼻水、悲鳴。この姿であと6時間も掃除させられていた可能性……他のバカ達が自分を嘲笑っていた未来……逆らえずに従った事実……目が血走る。モップを持った両手が、無意識に震え力む。歯茎が痛くなるほど、歯を食いしばってもいた。
そんな彼女から、足音が離れていく。
「ご冗談はおやめください。不届き者を成敗しただけのこと」
こつこつこつ……カゲローのくぐもった声がより小さく。
「そうかあ? 君、割とバレバレだぞー、なんちゃって……あははごめんごめん!」
ざっ、ざっ、ざっ、ざっ……ロクローの楽し気な声はそのまま大きく廊下に響き。
しかしだ。もう一つ聞こえるべき足音がなかった。
ルリスは気づく。今もなお、自分のすぐそばにて足を止め、見続けている一人の人物を。
リサー。見上げると、笑っている。しかし、嗤っているのではない。小さく口を開くと、小さな声がぽつりと漏れた。
「カゲローむかつくやん……一泡吹かせん?」
2・
リサー・バビロフ・コウモト。出身は赤ん坊のころにしか住んでいたことは無いが、父の故郷・日本の大阪という土地。ちなみに母親は京都生まれのロシア人ハーフ。そんな両親の仕事で宇宙ステーション住みとなり19年。VES隊員を目指したのは7年前のある事件がきっかけである。入隊は4年前だ。
出世願望も人並み以上にあった。戦闘が比較的不得手ながら情報収集の技術や作戦能力によって活躍、昨年は副隊長に昇進するのではという噂が出るに至ったほどだ。だが、突然現れたカゲロー・シンバによってその道が一旦にも絶たれたことは、VESでは知られた話でもある。
「出世競争に負けた復讐を企んでた、ってわけね」
暗い倉庫で、鎧姿のルリスが言うと、リサーは眉を小さくひそめた。
「あんま思い出させんといてぇな……嫌な思い出なんやさかい……」
小さく開け閉めされる唇の隙間から発されるのは、柔らかくもはっきりと苛立ちの込められ、また声量低くもはっきりと聞こえる声だった。まるで静かな風。その内容と感情とを、あらゆる障害物を潜り抜けて他者の鼓膜、そして心に届けてしまうよう。
この場にいる別の2人……ルリスと、向かいの壁に背を預け、足を投げ出して座り込んでいるカゲローに。
「うひいいいいっ、うひいいいいいっ! ひいいいいっ、や、やめて……やめてくれえええええ!!!」
カゲロー・シンバ。VES第一部隊副隊長。一年前にロクロー・シンバの遠縁として招かれ、試合にてその実力をイレーナ司令官や各隊長に見せたことで副隊長として認められた。その素顔を見た者はロクロー以外……せいぜいがイレーナ司令官のみであろう、とも……ない、と言われていた。が、今、彼は両手だけで顔を覆い隠し、昼間のルリス以上に狼狽する醜態を晒していた。
「大成功やでぇ……ここまでうまくいくとは思わんかったわ……」
そう言ったリサーの両手に持たれているのは、一本の黒いスコープ。リグライの人生を地獄に変えたあのアーマリムーバーの、対カゲロー用カスタマイズ版――鎧の内部機械にアクセスしてより確実かつ細分化してパーツを奪える――であった。
「まあ、うちが鎧のコードを手に入れたんやさかいに、当たり前やったっちゅうことやけどなあ」
ルリスが、カゲローの顔の横の壁を蹴る。だあん、と大きな音がして埃が舞い落ち、カゲローは声を失った。
「うぐ……!」
「顔見せなさいよ、なに? 恐怖症かなんか?」
残忍な声だ。殺気を演出している。先の恨みは大きい。だが、それだけにこの何もできないカゲローの姿を見るのは楽しい。自分が囮になって戦いを挑んだ時は気が気でなかったが、まさかアーマリムーバーで顔だけ露出した瞬間に、今の状態が生まれるとは本当に意外だった。
手の隙間に見えるものを見、嗤う。
「しかしなまっちろい肌してるわねー、髪もそんな白かったとか、なんかアンタ本当に地球人?」
「う、うっ」
「まあいいわ。いい加減、顔を見せなさいよ」
「うう……うう」
「いい加減にしないと……鎧の股間部分取り上げて丸出しにするよ?」
言葉で甚振ってやるのも楽しい。リサーも微笑みご満悦だ。しかし、最後の言葉は再び哀れな悲鳴をもたらした。
「うっ! ううっ! いやだああああっ! いやだああああああああああああああ!!!」
その瞬間、一閃。否、二閃。ルリスの蹴りが右から、リサーの鎧右腕から出るエナジーブレットが、カゲローの頭部を挟み込んでいた。耳とその後ろは、未だに鎧に包まれていたためそこを狙って。するとこの衝撃によりカゲローの手が離れ、歪みながらもその素顔が再び露わとなったのであった。
「撮影っ!」ルリス。
「わかってる!」リサー。
言いながら、2人同時に鎧右腕に内蔵させたカメラでその顔が再び覆われる前に撮影。カゲローはこれに観念したのか、両腕をだらりと垂れ下げ、不安げな目で2人を見つめ始めた。
「あああ……あああ……」
「写真見て楽しむんはもっと後やわねえ……ここに実物があるんやさかい……」リサーが腕を下ろし、嗤う。
ルリスは前屈み、顔を覗き込み、嗤う。
「なまっちろいというより美白……ほんと、あんた地球人? ……って、なにそれ」
が、気づく。唖然とした。カゲローの右頬に描かれた絵……ではなく、刺青に。初めは攻撃で砕けた鎧の破片が付着したのかとも思ったほどだ。何しろ、こんなものを身に刻むなどありえないと思えるものだからだ。
“血管脈打つ真っ赤な男性器に、青い羽根をした揚羽蝶が止まっている“という。
「なんや……えっ」
次いで、リサーもこれを見て固まった。まさかと口を大きく、しかしかすかな音で呼気を放つ。しかし、直後、2人の悪女は口角を存分に持ち上げ、嗤いだした。
「あははははははは! なにそれキモぉおおおおお!」腹を押さえ、後ろの荷物に尻を激突させるルリス。
「なんやの!? なんやのぉ!? こんな変態さんがうちの代わりに副隊長ぉお!? 隊長に言うて、外したらなあかんのと違うぅ〜〜〜〜〜〜!?」
刺青を何度も繰り返して指さし、涙を飛ばすリサー。
「うううう……知られた……見られた……見られたぁああ……隊長ぉおおお……隊長ぉおお……」
カゲローはと言えば、やろうと思えばあの鉤爪や他の武器で今すぐにでも脅迫・カメラの破壊が可能であるにもかかわらず、泣き顔を見せている。これが彼の身体に備わった秘密の入口であり、そこに足を踏み入れられた時点で心を大きく抉られることになるから。
目が赤い。血走っている。
そんな心情を慮る気配など欠片も見せず、ルリスはカゲローの左脚根本を両手で掴んだ。
「そんじゃーもういいわね、マッパにしちゃおっかー!」
「せやなあ、ええタイミングやわあ」
これにリサーも追従、こちらは右脚根元を抱える。そしてアーマリムーバーを発動。接合部を消し去ることで、あっさりと腕力だけで鎧を奪い去られる屈辱を与えるのが目的だ。
そのまま、「そーれ!」と2人で引っ張ると、哀れにもカゲローは長く白い素の脚を晒した。アンダーウェアもこの時取り除いていたのだ。
「あはは、変態ハイレグ男〜〜〜〜!」
ルリスがひょうきんな口調でふざけた名付けをする。
「今度は乳首出さしたるわ」
リサーが脇に脚鎧を抱えたまま、右手だけで鎧の胸パーツ右側を奪う。黒い金属の内側から白い素肌に白めの、やや大ぶりの乳首が露わとなった……どこかぞくりとしてしまう。
「ふふん、なーんかやらしい感じやわあ」
「ひひうっ!」
ここでルリスが左脚鎧を足元に放り捨てた。
「次はどこ取ってやろうかな〜、まあメインは譲るとしてぇ〜」
がぎがいん、と痛烈に響く金属音……床に落ちた衝撃音でもあるが、それ以上に鎧に仕込まれた数本の刃が一斉に飛び出していた。
「きゃあっ! 危ないわね!」
飛び退き避けるルリス。リサーは自分の抱えていた鎧パーツをそっと下ろしながら冷や汗を垂らした。
「あぶな……気いつけんとなあ」
ルリスに対するアドバイスでもあったはずだ。だが、ルリスは逆上する。
「があああああああっ!!」
逆上し、鎧の左腕パーツを奪い、これでメット後部をフルスイング。
「そうよ、気をつけなさい……私がこの金属ゴミを捨てる前に、注意喚起しておくべきでしょう!? 副隊長のくせに、部下の安全も考慮できないわけ!?」
なんとも理不尽……リサーすらも一歩離れたほどだった。カゲローはと言えば、目を見開いてルリスを、ではなく、メット後部を見つめ始めた。砕ける音がしたから。びき、びき、今なお亀裂が走る音も。
「あ、うあ、うあ、うあああああああああああ!? だ、だめだ、うわ、だめだーーーっ!!」
メットに手をやり、立ち上がるカゲロー。衝撃で、鎧のパーツが次々と外れていく。ごとり、ぼろ、ぼろ、壁が崩れるように。その様に面食らった悪女2人だが、腰の鎧が大きすぎるパンツのようにすとんと落ちた瞬間にはまた笑いが先に走った。
小指以下。小さい。そして、白い。
「あははははははははっ!! 赤ちゃん!? きゃはははやだー!」
「あかん! もーどこまで笑わせてくれるねん! うちの故郷、行ったことないけど笑いの本場やねんで〜!?」
「ひひいいい、ひいいい、あああ、だめええ、隊長、隊長、隊長たすけて……リグライ隊長ぉおーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
子供のように人の名を呼びながら、彼は股間を両手でかばった。奪われなかった右手の鎧を落としながら。同時に、押さえを失った後部メットはばらばらに砕け散り。
これにより、彼はとうとう丸裸となってしまったのであった。
そして出る、本日もっともか細く情けない声。
「たひゅけてええええ……っ」
ちなみにルリスは“リグライと同じくらい!?”と言いそうになったのをすんでのところで飲み込んでいた。
3・
だが、ここでまたあることに気付いたのはルリスだ。
「……ラピ?」
否、リサーも同時に気付いていた。しかし、声が出なかった。目を見張り、カゲローの顔を……耳を見ていた。ファンタジー物語にある“エルフ”のように尖り、下向きに開いた耳を。
「この白い肌……尖った耳……間違いないわよね……!?」
ルリスが続けると、カゲローは身を屈めてへたり込み、左手を股間から離して床に這わせ、膝とともに動かしてルリスへと寄った。ばらばらの鎧をかき分け、乗り越えながら。
「お願い……誰にも……言わないでくれぇえ……死んでしまう……いやだ……いやだあ……!」
すると、ルリスは笑みを浮かべた。笑みを浮かべて、脚を開き、カゲローの身体を跨いでその上を通り、すぐ眼下に尻が見える位置にて立ち止まった。
そして自身も背を丸め、尻に握り固めた拳を入れた。穴に。
「カゲロー・ザ・フィストファーーーック!!! 」
「ごぎゃげあああああああああああああああっ!!!!」
緩かった。ふんわりとしてすらいて、面白いように手首までずっぽりと入った。しかも可愛くピンク色。
カゲローは白目を剥き、涙鼻水唾液を飛ばして両手を前に突き出し、完全に床に伏すこととなる。
「性犯罪軍団じゃん、みっじめ。全滅しなかったんだー」
右手を抜き、すまし顔で立つルリス。脚の間に現れた惨めな男性器をつま先でちょちょんと弄び、愉しむ。
「ひひょっ! うひゃうあっ!! ああああ、あうああああ……!!」
カゲローは腿と床の間に両手を差し込み、股間を覆おうとする。が、これも止められた。
「床オナ野郎!」
言葉だけで。それも直接やめろと言うのではなく、理不尽な罵声を浴びせられる立場となった惨めさを噛みしめることでの硬直を狙ったもの。狙いは成功。
「たしゅけ……お願い……助けて……お願い……!」
いじめられっ子のように、というより、反撃された惨めないじめっ子の末路のように力なく懇願するカゲローの姿を拝むことができた。自分に失禁させた者と同一人物とは思えない。まさか、リグライに次ぐ“鎧がなければこの様”を楽しむことができようとは。
命令する。
「成程ね……だからさっき、あんなこと私にしたってわけ。あんたのせいで私、凄く嫌な目に遭ったの。同じことを自分の意思でやるくらいの償いは必要よね?」
と言って、両足首を掴んで無理矢理反転させて仰向け状態に変え、下腹部を踏んだ。
すると、わかっていたのか圧迫でか、カゲローは失禁した。VES第一部隊副隊長、カゲロー・シンバが小便を漏らした。
「ひゃひあ! いやあああ! いや、いあ、いや、だああ!!」
「あははは、おもらしーーー! 赤ちゃんでちゅねー! 情けないでちゅねー! そーれ、ちんぐりぃい〜〜〜!」
なおも責めは続く。カゲローの身体が丸め込まれる。尻を上にして、下半身の影で上体を覆うこのポーズ。排尿が続いているため、カゲローは昼間のルリス以上の尿浸しになってしまう。
「うぼえっ! べっ! うおえう! うえっ!」
勢いもあったらしい。顔にかかった。鼻にも、口にも入った。目にも入った。思わず瞬かせることで、赤く染まった目が異様に目立った。違う。染まっているのではなく、そもそも彼の目は赤いのだ。
それも、“ラピ”の特徴。
この様を見続けていたリサーは、大きくはっきりと呟いた。
「プピちゃん……!」
ルリスが振り返る。「誰?」
カゲローが目を見開く。「その名前……!?」
4・
物心ついた時から、宇宙ステーション居住区にあるリサーの家には、父と母、そしてもう一人が住んでいた。
“ラピ”の少年、プピ。
“ラピ”は過去には遺伝子レベルの違法改造にて白い肌に赤い目、尖った耳を基本として、儚げな容姿をしてかつ買い手や主人等の任意によって特徴を定められる、“セクシャリアン”として辱められた種族だった。長らく秘密裏、悪人達の陰の楽しみとして使われていた彼らだったが、ある時大勢を召し抱えた極悪人によって、無差別強姦の一団として世に放たれ、多くの地域で悪名が轟いた。
だが、転じてここからVESの活躍によって改造の事実が知られることになったのである。
悪人らから解放され、リサーの父など何人かのVES隊員や宇宙ステーションの人々が引き取ると同時に、既に買われている者達の保護救出や、人権を認める手続きをする“ラピ解放運動”が開始されたのだ。
しかし、リサーが大人になり始めたころ……7年前。プピとの別れが訪れた。ラピを食い物にしていた者達や、それに迎合する者達が、宇宙ステーションを襲撃……そこに住まうすべてのラピが再び奪い返されてしまったのだ。
この後、リサーは漫画の戦神になぞらえ、髪を伸ばし金色に染め、VES隊員となることを誓った。家族や友人からの呼び名“リーちゃん”と呼ばれることをやめ、“リサーさん”となった。
プピは顔に卑猥な刺青を彫られ、尻を緩く変えられ、“モケノスケ”として生きることを強制されることとなり……そこから6年。ロクロー隊長が宇宙犯罪組織“ルドン”第4支部を壊滅させることで、彼に光を与えたというわけだ。
モケノスケとなるときの改造時……戦闘力が高められていた(理由は女主人が、“戦いでは強いのに私の前ではお尻ゆるゆるだと面白いわ”と思ったため)ことが、その後の役に立ったと同時に、今また地獄をもたらすことになろうとは。
ルリスによって膝裏を下に押し込まれ、ちんぐり返しを固定されているカゲローの顔を覗き込み、リサーは言う。カゲローの右頬に優しく指を這わせて。
「そうやわあ……ちょうちょの絵……うちがあげた絵が、ほっぺに描かれてる……!」
2人の目が合った。これは、再会だ。プピは宇宙ステーション襲撃の際、かつてリサーにもらった絵を女主人に破かれた。必死の形相で怒鳴り散らした末に彫られたのが、この刺青だったのだった。
「まさか……リー……ちゃん」
カゲローがか細い声を上げる。
「せやで……やっぱり……プピちゃんや……!」
震える声で、リサー。
「何? 何? プピとかペットみたいで無様ー……とか言ったらヤバイ雰囲気?」
2人の顔を見比べて慌てるルリス。
リサーは、ルリスの手に柔らかく触れ、静かに横へ押した。カゲローから離れてほしい、というお願いの意味だ。ルリスは、これを察し、応じた。数歩分下がり、いっそこの場を去った方が良いかとも思った。この状況、リサーを敵に回すのも厄介で、画像は消した方が良いかもと。やっぱりリグライで遊ぶのがいいかもと。フィストファックをやって、ぬっぽりとしたカゲローの尻の感触をリグライで再現しようかと。ノルヴィーの喜ぶ顔が目に浮かぶと。
リサーは、ルリスの代わりにカゲローの膝裏に掌を当て、言う。
「プピちゃんにまた会いたくて……VES隊員になりましたんやわ……」
「リー……ちゃん……」
「それでなかったら……誰か他のラピを引き取ってあげて……なあ」
「……リーちゃん」
「エッチしまくりたい思てましたんや……」
「……リーちゃん?」
リサーの顔が、上気していた。
「リーちゃん、な、何を」
「え、何? エッチって、は?」
あっけにとられる、カゲローとルリス。
がらん、ごらん。リサーの意思により、鎧の下半身が外れる音。
ぺたっ、ずっ。リサーの生の脚が、カゲローの太腿に重なる音。
「う、うびいいいいっ!? あああ、うひああああああ!?」
びき、びき、ずっず。他者に聞こえることは無いが、カゲローの小股間が勃起した音。
「あっはああ……!」
じゅるり、じゅっずる。リサーの股間から液が溢れ、またカゲローの股間を包み込む音。
「ひひうひゃひぁああああーーーーーーーーーーーーー! ぴきゃひゃきゃきゃきゃはあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
惨めな悲鳴、奇妙な動物の如くの叫びは、よがりと喘ぎのもの。違法改造を正常なものに戻す改造も、現時点では違法である。
「ああはあんっ、プピちゃん自身と再会できるなんて信じられまへんわあ……あはあ、夢にまで見た……10何年越しの夢が叶ったわぁ……もぉ、うちに気付かへんかったなんて鈍いお人やすなあ……もお、これからは離しまへんえ……!」
ずっく、ずっく。ずりゅ、ぬちゅくちゅ。ピストン運動による筋肉の動きと股間同士が液を間にしてすり合う音が、こっ、こっ、こっ。足早に、ルリスがこの場を背にして去る音と、次第に交わりを無くしていった。
5・
「待ってえな、ルリスはん」
「何? 私もう関係ないっしょ?」
「あかんわあ、やってえな。プピちゃんにもー一回、フィストファックぅ! さっきのお顔、上から見下ろしてみたいわあ〜」
「……お安い御用」
ぶっずぶあっ。