この世界は、主人公「アリア」の過ちで 「欲望の欠片」というものが世界に散らばり、 欲望に対する「常識」が少しずつ歪んでいる。 アリアは、この「欲望の欠片」を集めなければならず、 特定の生物が欠片を持っているのではなく 「場所」そのものに欲望の欠片が融合している場合… その「場所」で欲望を発生させ、 「欲望の欠片」を具現化させなければならない。 「場所」の「欲望の欠片」の具現化が進むほど その「場所」に限って「常識の基準」がさらに変化していく。 そして、これはとある村のサウナで起こる物語。 アリア) (ふぅ…熱気すご…) アリア) (この中のどこかに…欲望の欠片があるってことよね…) アリアはタオルで体を包み、用心深くサウナの中へと足を踏み入れた。 むわっと襲いかかってくる熱気に、一瞬息が詰まりそうになったが、すぐに慣れた。 立ち込める湯気の向こうに微かに見える木のベンチに、どさりと腰を下ろす。 アリア) (ふぅん…普通のサウナと変わりなさそうだけど…) アリア) (ここではどうすれば欠片が現れるのかしら?) アリア) (ただ…体を熱くするだけじゃダメだろうし…) その時、ギィィ…という音と共に、反対側のドアが開き ぽっこりと出たお腹にタオル一枚をかろうじて巻いただけの男が入ってきた。 おじさんは慣れた様子でアリアの横にどっかりと腰を下ろすと、 満足げに「くはぁ~」と声を漏らし、目を閉じた。 アリア) (えっ…) アリア) (………えっ?!) アリア) (お、女湯じゃなかったの?! なんで男の人が入ってくるの?!) 戸惑ったアリアがどうすることもできずに彼を見つめていると、 男はやがてゆっくりと目を開けた。 彼の視線がアリアの顔から、ゆっくりと下へ滑り落ちていく。 タオルで包んではいるが、 体の凹凸までは隠しきれなかったからだろうか、 男の口元に得体の知れない笑みが浮かんだ。 おじさん) 「はは、お嬢さん…驚いたかね? ここは混浴のサウナなんだよ」 おじさん) 「その反応を見るに、初めて来たようだねぇ…」 おじさんはねっとりとした笑みを浮かべながら話しかけてきた。 その無遠慮な眼差しに、アリアは本能的に体を少し縮こまらせて答えた。 アリア) 「…あ、はい……ただ…この村に少し立ち寄っただけです…こういう場所は初めてなので…」 おじさん) 「冒険者かね? ははっ、結構なことだ。若い頃の苦労は買ってでもしろ、と言うからな。」 ………… おじさん) 「ところでお嬢さん…」 おじさん) 「もしや…このサウナについて何か話でも聞いたのかね?」 アリア) (え…?) アリア) (もしかして…この人も欲望の欠片について知ってるのかしら?) アリア) 「いえ、特には…」 アリア) 「何か…ここにまつわる話でもあるんですか?」 アリアは慎重に探りを入れてみた。するとおじさんは、待ってましたとばかりに話を始めた。 おじさん) 「はっは、逸話ってほどのもんでもないがね…」 おじさん) 「このサウナは昔からある普通のサウナだったんだが…」 おじさん) 「最近ここで汗を流すと、人々がそう…なんというか…」 おじさんはそう言いながら、さりげなくアリアの太もものあたりをちらりと盗み見た。 おじさん) 「妙に『素直』になるって言うかねぇ?」 おじさん) 「普段はぐっと心の奥に押し込めている、そういう…「欲望」みたいなものが、むくむくと這い出してくるんだと…はっは」 おじさん) 「だからかねぇ、ここで「いい仲」になって出ていく男女も…結構いるんだよ」 アリアは一瞬鳥肌が立つのを感じたが、同時に胸の片隅で奇妙な気配がむくりと蠢くのを感じた。 (!) アリア) (この感じは…欲望の欠片が具現化してる…!) アリア) 「そ…そうなんですか…不思議な場所ですね。」 今のこの状況は決して愉快ではなかったが、欠片を具現化させるためには、このおじさんとの対話が必要だと直感した。 おじさん) 「はっはっ、それでだね、お嬢さん……もし…よければ、私ともう少し「深い話」をしてみないかね?」 アリア) 「……はい?」 おじさん) 「ごらんの通り、ここはかなり…密な空間だろう?」 おじさん) 「お互いの…隠された姿を晒すには、もってこいの場所だということだよ」 おじさんの声が一層低く、ねっとりとしたものに変わった。 彼の視線はもはや隠すこともなく露骨にアリアの胸と足の間を行き来し、 タオル一枚でかろうじて隠されたアリアの体は、 熱気とおじさんのいやらしい視線で、さらに火照り始めた。 具現化が進むにつれて不快感と同時に、 得体の知れない興奮が全身を包み込むのを感じた。 アリア) (具現化はすぐに終わりそうだし…わざわざ危険を冒す必要は、ないわよね…) アリア) 「あ、いえ…私は、そういうお話は…」 (!) アリア) (え? 具現化が…止まった…?…… どうして?) アリア) (まさか…このおじさんが望む通りにしなきゃいけないってこと…?) アリアの疑問に答えるかのように、欠片の具現化が微かに揺れ動いた アリア) 「わ、私はもう、失礼します。約束があるので…」 サウナの熱気と、欠片の具現化によって蓄積された興奮で、 これ以上は危険だと判断したアリアは、急いでその場から立ち上がった。 おじさん) 「はっは、そうかね? それは残念だ。また寄ってな」 おじさんは名残惜しそうに舌なめずりをしたが、それ以上引き止めようとはしなかった。